聖なる夜にすべてを捧ぐ




バラバラバラ

二人を地上に下ろしたヘリが再び空へ飛び立った。
後に残されたヒノエと望美はそれを見送った後、帰路に付く。
手はしっかりと絡ませて、静かに寝静まった住宅街を歩いた。

「じゃあ、また明日」

望美の家の門まで来るとヒノエは言った。
絡ませた指を解いていく。
名残惜しそうに、最後の指先まで触れ合いながら。
完全に二人を分かつまであとわずか、というところで以外にも望美が握り返してきた。
ヒノエの手を両手でぎゅっと握り締める。

「望美?」

思わぬ望美の行動にヒノエが驚いて問う。

「ヒノエくんは、私のこと知ることができた?」

望美は言った。
見ると顔は真っ赤に染まっている。

「まぁ、ね。全てとは言わないけど、今までより違うことが知れたかな」

口元に人差し指を当ててウインクを知る。
その意図を感じて、望美はますます顔を赤く染めた。
頭の中にヘリの中での出来事が思い出される。

「あの、あのね。私・・・も」

その先は小さすぎて聞き取れない。
俯く望美の口元にヒノエは耳を寄せた。

「はっきり言わなきゃ、聞こえないぜ。
安心しろよ。姫君の言葉ならどんなものだって受け止めてやるからさ」

その言葉に意を決して、望美は顔を揚げた。

「私も、ヒノエくんのこともっと知りたい。その、ヒノエくんが言ってたように、心も体も、過去も未来も?」

最後が疑問系になっているのが若干気になるところだが、そんな台詞をさらりと言えないのがまた可愛らしい。
ヒノエにとっては最高の口説き文句だった。
一瞬驚いた表情を浮かべたヒノエだったが、すぐに喜びの表情を顔いっぱいに広げた。
そして、望美に握られていた手を、自らも握り返す。

「いいぜ。お前にならオレの全てを見せてやるよ。一生掛けて・・・ね」

今度は望美が驚く番だった。
―――いっしょう。
それは永遠を誓う言葉。

「オレを知るなら、それくらいの時間は掛かるってこと。もちろん、お前を知るのにもね」

未来は長いよ。ヒノエはそう言って微笑んだ。

「覚悟はいいかい?オレの姫君」

望美は一筋の涙と共に、ヒノエの胸へと飛び込んだ。
そして、優しくヒノエは望美を抱きとめた。



<了>



今回はちょっとばかり攻め望に挑戦!
とはいえ、あの望美ちゃんですからそんなぐいぐい押せません。
で、結局はヒノエに逆手を取られる。
こんな感じの二人が大好きです。
内容的にはそんなにクリスマスって感じじゃないですが、イベント後ってことで。