押してダメなら・・・




「朔、朔ぅ〜」

「どうしたの?そんなに慌てて」

泣きそうな表情でとたとたと走ってきた望美を朔は驚いて受け止めた。

「ヒノエくんが、ヒノエくんがぁ」

「ヒノエ殿がどうかしたの?」

二人が付き合い始めたということは聞いていたが、まさかヒノエが望美に何かしたのだろうか。

(だったら絶対許さないわ)

望美が幸せならと温かく見守ろうと思っていたが、望美を泣かせるようなら話は別だ。

「キスをしてこようとしたの」

(キス?)

聞きなれない言葉に朔は眉をしかめた。

「待って、落ち着いて。私にはその『キス』というものが何なのか分からないわ」

「そっか。キスっていうのは、いわゆる口付けのことだよ」

自分で言葉にすると気恥ずかしくて望美は頬を染めた。
一方、『キス=口付け』という方程式が頭の中で成り立った朔は怒りにブルブルと震えていた。

(早速手を出したわね。あの女たらし!)

かわいい望美を取られたばかりか、あまつ唇まで奪おうとは。

「私、びっくりして思わず逃げちゃったんだけど、やっぱりまずかったかな」

どうやら今回は未遂に終わったようである。
朔は怒りを抑えてにっこりと微笑んだ。

「いいのよ、望美。ヒノエ殿なんか一生焦らしとけばいいわ」

「朔、怒ってる?」

朔が人のことを『なんか』というのは珍しい。

「いいえー。そんなわけないじゃなーい」

明らかに語尾がおかしいが、望美はあえて突っ込むことはしなかった。

「もしかして、私たちのこと反対?」

おずおずと不安げに尋ねる望美を見て、朔は困ったように微笑んだ。

「別に反対と言うわけではないのよ。確かに少し、いえ、かなり心配な点はあるのだけど」

(あるんだ)

「でも、私はあなたが幸せならそれでいいわ」

朔はそっと望美の頭を撫でた。

「望美、口付けしたいと思うのは恋人同士では自然なことよ。大切なのは自分がどうしたいか。
望美はどうしたいの?」

「私?私は・・・」

望美は口ごもった。
しかし、顔は赤くなり、何が言いたいかは丸分かりだ。

「素直ね」

朔はクスッと笑った。

「でも私、恥ずかしくて」

望美は赤くなった頬を手で覆った。
ヒノエが早々に手を出したのは気に入らないが、望美がそう望むなら。

「男女の理の中に『押してダメなら、引いてみろ』って言葉があるわ。
思うのだけれど、望美は引きすぎなのではないかしら」

「どういうこと?」

「恥ずかしいと思うのは心の準備がまだできていないから。
自分が準備できている時にしてみれば、分かっているから大丈夫でしょう。
もう少し積極的にやってみてはどうかしら」

「でも」

「あとは自分次第よ。頑張って」

まだ納得のいかないという望美は戸惑いながらも礼を言い、ヒノエの元へ向かったのだった。
その後姿を見送りながら、朔はヒノエへの怒りを再び露にした。

(ヒノエ殿、望美に手を出した罪は重いわよ)

朔はあれこれと試案を練り始めた。



時を同じくして・・・・。



「敦盛。かつてこの場所には鳥や蝶などいろいろなものが来たが、今日は珍客が来たようだ」

そう言って、リズヴァーンはちらりと敦盛越しに横を見た。

「はい、先生」

敦盛もちらりと横を見る。
二人の視線の先には、ずーんと重い空気を纏った青年が一人。
晴れた日だというのに、そこだけ暗い曇りの日のようだ。
ここは、邸の屋根の上。
リズヴァーンと敦盛のお気に入りの場所である。
今日も今日とて二人して座っていると、ガックリと肩を落としたある人物がやってきたのだ。

「どうしたのだ、ヒノエ」

いつもとは違い、すっかり消沈しているヒノエに、果敢にも敦盛が声を掛けてみる。

「いいな、ココ。暖かくて、悩みなんか全くない感じ〜」

膝を抱えて、あらぬ方向を見ながら、ヘヘッと不気味な笑いを浮かべる。

(ヒノエが壊れた!)

ガンッと嫌な衝撃を受けた敦盛は、助けてくれと言わんばかりにリズヴァーンを振り返った。

「彼は何処か違う世界に行っているようだ。何があったのか話してみなさい」

落ち着いているリズヴァーンは、ばっさりと現状を切りつけ、ヒノエに説明を促す。

「もう我慢の限界だ!」

いきなりヒノエは叫んだ。
傍にいた敦盛は、その勢いに負けてビクーッと体を強張らす。

「だって、そうだろ!目の前に欲しいものがあるっていうのに、我慢できるかってんだ!
なぁ、そうだろ?敦盛ぃ!!」

ヒノエは敦盛の襟元を掴んで、これでもかとばかりにガクガク揺さぶった。
敦盛は返事もできずに、されるがままだ。

「ヒ、ヒノッ、やめ・・・」

途切れ途切れの悲痛な叫びが僅かに漏れ聞こえるが、ヒノエはお構いなしだ。

「ヒノエ、落ち着きなさい。そんなに揺らしては、屋根が抜ける」

(そこですか、リズ先生)

どこにどう感銘を受けたのか知らないが、
ようやく止まったヒノエの手から逃れた敦盛の突っ込みは
言葉にされることなく、敦盛ごとパタリと屋根に倒れた。

「別に、怖がらせるつもりはなかったんだ・・・」

倒れた敦盛をよそに、話はシリアスに進んでいく。



ふっくらと形のいい輪郭。

紅を引いたわけではないのに、うっすらと桃色に色づいていて、開けば誘うよう花のようだ。

触れることができたならどんなに柔らかいんだろう。

望美と二人で話していたヒノエは、望美のある一点に吸い寄せられていた。
ぼんやりと考えて、誘われるがままに無意識に顔を寄せいた。
気がつけば・・・

「イヤッ」

そう叫び、鍛えられた腕で思いっきりヒノエを突き放して去っていく望美の姿が見えた。
縁側から突き落とされたヒノエは、砂にまみれてただただその後姿を見守るしかなかった。



「神子、強くなったな」

「ああ、あの突き落としは凄かったぜ」

「・・・・」

ヒノエの話を聞き終え、筋違いの感想を述べるリズヴァーンとそれに乗るヒノエに、
もはや敦盛は突っ込む気力もない。

「それで、お前はこれからどうするのだ」

「どうするも何も、望美が怖がってるんだからどうしようもないね」

ヒノエは深い溜息をついた。

「よく聞きなさい。男女の理の中に『押してダメなら、引いてみろ』という言葉がある」

「それで?」

「思うに、お前の場合は押し過ぎなのだ」

リズヴァーンの助言にヒノエは「うーん」と唸った。
全く自覚なしという感じだ。
そこで敦盛はさっきの仕返しとばかりに止めを刺す。

「そうだ。はっきり言ってヒノエの口説き台詞には、引く」

(えっ、オレ引かれてたの?)

初めて知った事実にヒノエは衝撃を受けた。
その表情を見て、敦盛は珍しく得意げに笑みを作った。

「とにかく、もう少し態度を自粛しなさい」

気の抜けたような顔をしているヒノエにリズヴァーンは忠告した。

「あ、ああ。ありがとな、リズ先生。だてに歳くってるわけじゃねぇんだな。参考に、なったぜ」

余計な一言を残し、ふらふらとヒノエは屋根を降りていった。

「さぁ、リズ先生。日向ぼっこの続きでも・・・」

ヒノエに衝撃を与えられて、珍しく上機嫌の敦盛は嬉々としてリズヴァーンを振り返ってギョッとした。

「あの、リズ先生?」

鞍馬山の鬼といわれていたリズヴァーンだが、この時はまさしく鬼のような形相をしていた。

(ヒノエが余計なことを言うからだ)

自分は何もしていないのに、結局はヒノエに面倒事に巻き込まれる。
小さい時からそうだ。
大人に内緒で鯨を取りに言った時も、水車を作ったときも、事の発端はヒノエだった。
この時も敦盛はまたしても面倒事に巻き込まれることになるのだった。



「積極的に、積極的に」

「自粛、自粛」

ブツブツと呪文を唱えるように呟きながら廊下を歩いていると、
ちょうど曲がり角のところで望美とヒノエはぶつかり合った。

「ごめんなさいっ」

「いや、俺こそ。って望美!?」

「ヒノエくん!」

先ほどの気まずさから場に重い空気が流れる。

(せ、積極的に・・・だよね)

望美は思案すると、思い切ってヒノエを誘ってみた。

「ヒノエくん、少し話さない?」

「えっ、あ・・・その」

(自粛するべきなんだよな)

せっかく望美がヤル気になっているのに、とことんタイミングの悪い男である。
しかし、

「ダメ?」

上目遣いに小首を傾げられて、ヒノエの理性は早くも崩れ去ったのだった。

「いいよ。行こうぜ」

そう言って、自ら手を引いて望美を外へと連れ出したのだった。



外へと出た二人は、少しだけ肌寒い秋風の吹く中、木に背中を預けて座っていた。

「珍しいね、望美から誘ってくるなんて」

「そう、かな」

自粛の壁がなくなりすっかりいつもの調子を取り戻したヒノエは、あいからず攻めていた。

(ま、考えてみればオレに自粛なんて言葉に合わないし、
っていうか望美を前にして自粛しろって方が無理だし)

ちらと隣を見れば、何やら一生懸命考えている様子の望美の姿が目に入る。
眉を少しだけひそめて、考えに没頭する姿もまた愛らしい。

「ねぇ、姫君。折角オレと一緒にいるんだからさ、もっとオレのほうを見てよ」

くいっと顎を掴み、自分の方に向けさせる。

(あれ?)

いつもならここで、かあぁと耳まで染めるほど赤くなるのに、今は違っていた。
キッとヒノエを睨みつけているのである。
それはまるで何かに挑戦するかのように。

(やっぱ怒ってるのか)

ここに来て、ヒノエはまた自粛をするべきだったかと思い始めてしまった。
調子に乗って攻めすぎたのではないかと、再び自己嫌悪に陥ってしまったのだ。

「ヒノエくん、目を瞑って」

「あの」

「いいから!」

挑むように言われ、ヒノエは気圧されて素直に瞼を閉じた。
すっかり望美が怒っていると思い込んだヒノエは、目を瞑っている間この次何が起こるのかとドキドキしていた。
一方、望美も別の意味でドキドキと心臓を高鳴らせていた。

(大丈夫。落ち通け、望美。積極的にするって決めたんだから)

目の前には目を瞑っているヒノエ。
気のせいか落ち着かないように見えるが、いつも余裕のヒノエである、きっと気の迷いだろうと望美は思った。
――あとは自分次第よ。
朔の声が頭を掠める。
そう、自分次第だ。
自分でタイミングを見極める。
望美は大きく一つ深呼吸した。

(よしっ)

覚悟を決めると、一気にヒノエに顔を近づけた。

チュッ

と、望美の唇とヒノエの・・・鼻が重なった。

(は、鼻!?)

勢い余って望美はヒノエの鼻にキスしてしまったのだ。
ヒノエは何が起こったかわからずにパチクリと目を瞬いた。

(し、死にたい・・・///)

穴があったら入りたいとここまで切に思ったことはない。
意を決して起こした行動が大失敗に終わり、望美は恥ずかしさと情けなさでガックリとうな垂れた。

「く、・・くく・・・」

「?」

前方から聞こえる、笑いをこらえるような声に望美は顔を上げた。
見るとヒノエが必死に笑いをこらえている。

「ヒノエくん?」

「あはははっ」

ついに笑いをこらえきれなくなったヒノエは、バンバン地を叩きながら笑い転げた。
それを見ていると余計に恥ずかしくなり、望美は抗議した。

「なによぉ、私だって必死に・・・」

「いや、悪い悪い。・・・はは」

全然悪いと思っているようには見えない。
望美はぷぅっと頬を膨らました。
ようやく笑いを抑えたヒノエは、なだめるように望美の頬を撫でた。

「ごめん、あまりにも望美が可愛かったからつい、ね」

「ホントに悪いと思ってるの」

「思ってる、思ってる」

ヒノエは微笑んだ。
つられて望美も「じゃ、許してあげる」と微笑み返した。
その微笑みに、ヒノエは今度こそ理性が吹き飛んだ。
ヒノエは立ち膝になると、恭しく望美の手をとり口付けた。

「有り難き幸せ。願わくば・・・」

ぐいっとそのまま手を引けば、バランスを崩した望美が自分に倒れこんでくる。
それを軽く受け止めて、ヒノエは耳元に囁いた。

「その唇もいただけませんか?神子姫様」

耳にチュッとワザと音を響かせて口付けし、望美の思考回路を麻痺させる。
そしてそっと望美の唇に、自分の唇を重ねた。
待ち望んだソレは思っていたよりもずっと柔らかくて、ヒノエの思考をもクラクラと麻痺させる。

(ヤバい、止まんねぇかも)

女性はよく花にたとえられるが、望美もヒノエにとって特別な花だった。
意図せずとも自分を誘う、甘く、かぐわしく、美しい花。
ヒノエはこの異世界の少女に引き寄せられて止まない。
ヒノエは唇を割って、中に舌を差し入れた。

「んっ」

甘い感覚に望美が声を漏らす。
その声に誘われて、ヒノエは口付けをより深くする。

「ふぅ・・・はぁ。ヒノッ・・・くっ」

苦しさを訴えようと、望美はヒノエの衣を強く握り締めた。

「ごめん、望美!」

ハッと気付いたヒノエはようやく望美を解放した。
二人の間に荒い息遣いが流れる。

「悪い、お前初めてなのに、つい嬉しくて」

「ううん。謝らなくていいよ。私も嬉しかった」

「望美・・・」

「大好き、ヒノエくん」

望美はヒノエの胸に顔を埋め、ヒノエは望美を優しく抱きしめた。



「あっ!先生」

ヒノエはちょうど厨から出るリズヴァーンを見つけて声を掛けた。

「ヒノエか」

「先生、あんたの言ってたこと間違ってたぜ」

「どういうことだ」

リズヴァーンは眉をひそめた。

「男女の理の話だよ。あんたは『押してダメなら、引いてみろ』って言ったけど、オレは違うと思うぜ。
オレ的に言うとだな、男女の理は『押してダメなら、もっと押せ』だ」

「・・・・」

この様子から見ると、どうやらヒノエはその自論で成功を収めたようである。

「ヒノエ、私もちょうどお前を探していたのだ」

そう言うとリズヴァーンは手に持っていた皿を差し出した。
美味しそうな丸い揚げた菓子が持ってある。

「へぇ、これって譲の新作かい?うまそうじゃん」

一つつまんでポイッと口に投げ入れる。

「うん。味も悪くない。これを望美に持っていけって事?」

食べた時にマスクの下でかすかに笑ったかのように見えたが、恐らく見間違いであろう。

「いや、これはお前の分だ。残さず食べるといい。神子には後から持っていく」

「じゃ、遠慮なく貰っていくよ」

「ヒノエ、お前にもう一つ忠告しておく。丸いものには気をつけなさい」

「はぁ?」

訳の分からない忠告に、首を傾げながら皿を受け取るとヒノエはその場を後にした。



その日の夜・・・。

「あれ?ヒノエくんは?」

夕食に出てこないヒノエを不思議に思って望美は尋ねた。

「さぁ、どうしたのかしら」

「なんか、悪いものでも食べたみたいですよ」

「それでお腹壊しちゃったみたいなんだよね〜」

朔、弁慶、景時の言葉にふんふんと頷く。

「そうなんだ、何か拾い食いでもしたのかな」

「まさか、お前じゃあるまいし」

「うるさいよ、将臣くん。私拾い食いなんかしないもん」

「そういえば、先輩。今日のドーナツはいかがでしたか?」

「うん。とても美味しかったよ。さすが譲くん」

「それはよかった。また作りますね」

「ヒノエのは特別製だったんだ。そうですよね。先生」

「お前は少し黙っていなさい」

ぴしゃりと一括されて九郎は口をつぐんだ。
その場の望美以外の者がホッと胸を撫で下ろす。

「へぇ、そうだったんだ。いいなぁ、ヒノエくん」

(神子、それは違う)

のん気に羨ましがる望美に、すべてを知っている敦盛は心の中でそう呟いた。
しかし、彼もヒノエに巻き込まれた一人なので、ヒノエの弁明はしないでそのまま黙っておく。

「神子も食べたい?でもね、それって・・・」

「は、白龍。もういいから、ね?さぁ、ご飯にしましょう」

朔の気の利いたフォローでようやく夕食が始まったのだった。

(? 何かみんなおかしいな)

望美も疑問を持ちながらも早くご飯を食べたい欲望の方が勝り、あっさりとその疑問は忘れてしまった。
そのころヒノエはというと、誰もいない部屋の中、一人掛布に包まってうんうん唸っていた。

「くっそー、あいつら覚えとけよ!
リズ先生も、知ってるなら食べる前に言えってんだ。
丸いものって思いっきりあの菓子じゃんか」

はめられたことに気付いたものの、気付いた時には既に遅い。
何に反感を買ったか分かっているがゆえに、正面切って怒鳴れない。
そんなわけで腹の痛みを堪えながら、それが過ぎ行くまでずっと恨み言を言っていたのだった。


<了>



どうしてウチの八葉たちはこんなに黒いんだ!
またしてもヒノエが可哀そうなことになってます。
でも、本当はラストに厠に駆け込むというオチだったので、
それに比べればいくらかマシになってると思うんですが。
ヒノエが可哀そうなのはもはやウチの定番になっているようです。
(何故か、オチを作らなければ気がすまなくなっています)
性懲りもなく、またしてもおまけです。
今回は「朔とリズの復讐編」です。


将「何だって!ヒノエが望美に!」
景「それは本当なのかい。朔」

こっそりと厨に集まって、朔は先ほどの望美の様子(脚色有)を伝えた。

朔「本当よ。さっき私に泣きついてきたもの」
九「無理やりか。だとしたら許せんな」
譲「ええ、三枚に下ろしてやりたいぐらいです」

譲は持っていた包丁をキラリと光らせた。

将「これは、ペナルティだな」
白「ぺなるてぃ?」
譲「罰のことだよ」
弁「罰ですか。それなら是非、この新しく開発した新薬の実験台に・・・」
景「いやいや、僕の実験台に・・・」

どちらにしても最悪だなと他の全員が思った。

リ「ちょうどよいものがある」

どこから現れたのかリズヴァーンと敦盛が勝手口のところに立っていた。
見れば服の所々に土や葉っぱがついている。

弁「どちらに行かれていたんですか?へぇ、これはよいものをお持ちですね」

弁慶は敦盛が持っていた大量の草を見ていった。

九「何なんだ?」
弁「下剤となる薬草ですよ」
将「つまり、これを食べさせると腹がピーゴロゴロってわけだな」
譲「兄さん、もう少し言い方を考えてくれよ」
弁「それでは、譲くん。これで何か作ってください」
譲「はぁ、じゃあ先輩にリクエストされていたドーナツでも作ってみます」
白「どーなつ?それって美味しいもの?」
譲「ああ。白龍も食べるか?」
白「うん。譲が作ったものなら何でもおいしい」
朔「どうせだから、これ異常ないってくらいたっぷり入れてあげましょう。フフフ」

朔は『番町更屋敷』のお菊さんのごとく「一ま〜い、二ま〜い」と数えながら薬草を数えだした。
ほのぼの(?)と下剤入りドーナツが作られるのを見守りながら、
将臣はススッと何もしゃべろうとしない敦盛のところへ寄っていった。

将「なぁ、リズ先生があそこまで怒る理由って何なんだよ」
敦「わ、私は何も・・・」

年寄り呼ばわりされたなどとは口が裂けてもいえない。
ヒノエと別れた後のリズヴァーンは恐ろしかった。
有無を言わさず敦盛を山へ連れて行き、ものすごい勢いで薬草を探し始めた。
もう二度とこんな恐ろしい思いはしたくないと思うほどの体験だった。

将「言わなきゃ、お前にもあのドーナツ食わせるぞ」
敦「そんな!将臣殿〜」

こうして敦盛の災難は続いていくのだった。


そんなわけで、あのドーナツが作られたわけです。
結局一番の貧乏くじを引いてしまったのは敦盛だったわけですね。

それでは555hitを踏んでくださった彩香様に
葉月から心からの感謝と愛をこめて・・・